有機種子のこと

2023/02/17 有機種子のこと

有機農業が見直されるワケ

最近よく耳にする「有機栽培」や「オーガニック」という言葉。 しかし、どうして近年、こんなに「有機」が話題にのぼるようになったのでしょうか? そもそも人類は、長い歴史の間ずっと「有機栽培」を行っていました。つまり、化学肥料や農薬を使わずに自然の摂理に従って作物を栽培していたのです。

有機農業の見直し

しかし、近代になると、人口の増加にともない、技術を駆使して農産物の生産量を上げるようになりました。 1950年代の「緑の革命※1」以降、世界の農業は、人工的に交配した生産性に優れたタネに、農薬と化学肥料を組み合わせた近代農法にシフトしていきます。 近代社会において、バイオテクノロジーを駆使した農法は、膨れ上がった世界の胃袋を満たす重要な栽培手法となりました。 その一方で、近代的な農業の産業化によって以下のような問題を含めた多くの問題点が浮かび上がってきました。

土壌・地下水の汚染

化学肥料を大量に投与することにより、土壌が劣悪化し、耕作用の土壌の質を維持することができなくなります。また、大量の化学肥料を与えすぎると、余剰な成分が地下水に流れ込み、汚染の原因となります。

資源的リスク

石油資源に依存する化学肥料を使用した栽培方法に傾きすぎると、資源の減少していく将来、持続可能な農業を考える上で大きな問題が生じる恐れがあります。

農薬被害

農薬の多用は、生産物の残留農薬だけでなく、生産者に直接害を及ぼすリスクが高いため農薬使用の問題が指摘されています。

生態系への影響

遺伝子操作を伴う農業生産は、生態系を狂わせないか?人体に悪影響をもたらさないか?との問題が指摘されています。

薄気味悪い倫理問題

近代の畜産物生産の技術において、例えば、脳死させた若鶏を固定させて栄養剤を投与し続け、肥大化させて出荷するという鶏肉生産技術などは整いつつあり、生命に対する倫理問題が問われています。
では、多くの人口を抱える世界の胃袋を満たしつつ、人と環境にとって本当に持続可能な農業とはどうあるべきなのか?
このような難しい問題に直面している今、農薬や化学肥料の使用を最小限に抑え、遺伝子組換を行わない有機農業が見直されるようになってきたのです。
もちろん、有機農業がすべての問題を解決できるというわけではありません。
誤った有機農業の推進は、上記と同様の問題を引き起こす可能性も指摘されています。
それでも、欧米諸国や日本といった先進国では、法律を施行してまで有機農業を推進しています。
これらの動きは、持続可能な農業を考える上で、有機農業は農業の基本であり、近代化する農業の新しい道を切り開く一助となる可能性が十分にあるからではないでしょうか。

※1「緑の革命」1940年代から1960年代にかけて高収量品種の導入や化学肥料の大量投入などにより穀物の生産性が向上し、穀物の大量増産を達成したことを指す。
農業革命の一つとされる場合もある。

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